NHKの美術番組「解剖!マスターピース」(2026年3月1日 初回放送。ナビゲーターはお笑いコンビのバッテリィズ)で、ピカソの「アヴィニョンの娘たち」が取り上げられていました。番組は、専門家や著名人が「院長」と「解剖医」になって、名作を解き明かす形式です。この回では、モデル・俳優の菊地姫奈さんが、絵のポーズを実際にまねして、絵の秘密に迫ります。そこへ、科学技術論の佐倉統さん(院長)、美術評論家の平松洋さん、アニメーション作家の水江未来さん、芸術学者の布施英利さんが、それぞれの目で絵を読み解いていきます。(番組の公式ページ)
この記事は、その内容を、「子どもに、絵の見方を伝えるヒント」としてまとめたものです。文字起こしの誤りは、文脈から直して、最後に補正メモとして載せました。
🖼 どんな絵?
- ピカソが26歳のころに描いた、5人の女性の絵です。縦も横も大きな作品で、見た人は、まず大きさに驚くそうです。
- 5人は、顔つきも、描き方も、それぞれまったく違います。
- 描いた当時、画家仲間からも、ひどく悪く言われました。ピカソ自身も、しばらく発表せず、アトリエにしまっていたそうです。
- それでも、この1枚が、20世紀の美術の新しい道を開きました。
🔍 絵の見方の7つのコツ
① まねしてみる
菊地さんは、絵の女性と同じポーズを、実際に取ってみました。すると、「立っているはずなのに、右足がどうしてもうまくいかない」ことに気づきます。そこで、寝たポーズを試したら、形がぴたりと合いました。左から2番目の女性は、実は寝ているのかもしれない、という発見です(美術史の研究者にも、同じ説があるそうです)。
子どもへの声かけ:「この人と、同じかっこうをしてみて。体は、どうなっている?」
② いろんな角度から見る
菊地さんは、約2時間、およそ50枚の写真を撮って、気づきました。立っている姿、寝ている姿、上から、下から。いろいろな角度から見たものを、1枚の絵に組み合わせているのでは、と。これが「キュビスム」という描き方の考え方です。
子どもへの声かけ:「前から見たら? 横から見たら? 上からだと、どう見えるかな?」
③ 「どこが違う?」を探す
この絵には、いろいろな美術の特徴が混ざっています。番組の解説では、次のように説明されていました。
| 場所 | 影響を受けたと考えられるもの |
|---|---|
| 左端の女性 | 古代エジプト美術(横顔と、前へ踏み出す足) |
| 中央の2人 | スペインのイベリア彫刻 |
| 右の2人 | アフリカの仮面 |
子どもへの声かけ:「5人の顔、全部ちがうよ。どこが、ちがうかな?」
④ 色で、奥行きを見つける
芸術学者の布施英利さんは、「赤は手前に飛び出して見え、青は奥に引っ込んで見える」と説明しました。この絵でも、手前のテーブルのスイカ(赤)と、いちばん奥の青い布が、奥行きを作っています。また、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」と同じように、近景・中景・遠景の3つの層が、ちゃんとあるそうです。一見ぺちゃんこに見える絵でも、奥行きは、残っています。
子どもへの声かけ:「いちばん手前は、どれ? いちばん奥は? 赤と青は、どっちが近く見える?」
⑤ 「もし動いたら?」と想像する
アニメーション作家の水江未来さんは、この絵を、「人が左右から入ってきて、6人が集まった瞬間」のように読みました。真ん中の3人がこちらを見ているので、絵を見ている自分も、その部屋にいるように感じる、という見方です。
また、右下の人物の顔が、体とちぐはぐなのは、顔が変形する途中(メタモルフォーゼ)かもしれない、とも言っています。水江さんは、型にはまらない、このカクカクした感じを、「ガキゴキ感」と呼びます。うまく型に入らないのに、なぜか印象に残る、という意味です。
子どもへの声かけ:「この絵に、音をつけるなら? 次の瞬間、この人たちは、何をするかな?」
⑥ 「なぜ、こう描いた?」と、時代を想像する
科学技術論の研究者で、番組の「院長」を務めた佐倉統さんは、ピカソが一人で天才だったのではなく、その時代の新しい発見に、影響を受けたと指摘しました。
- アインシュタインの相対性理論(1905年):「自分の目で見ているものだけが、すべてではない」という考え方
- X線の発見(1895年):肉眼で見えない部分も、見えるようになった
- パリのカフェ:画家、ジャーナリスト、若い科学者が集まり、新しいアイデアが生まれた
当時の流行だった連続写真の影響も、指摘されていました。動きの途中の、瞬間的なポーズの面白さに、ピカソは気づいたのかもしれない、という見方です。
子どもへの声かけ:「この絵を描いた頃は、新しい発明がいっぱいあったんだって。何か、関係あるかな?」
⑦ 「うまくない」ように見えても、いい
- ピカソは、14歳のときに、陰影も骨格も布の質感も正確に描く、とても写実的な絵を描いていました。
- あまりにうまくなってしまったので、「次は、どんな描き方があるか」を、真剣に探したのだろう、と解説されています。
- 布施さんの言葉:「ピカソは子どものように絵を描いた。しかし、子どもはピカソのようには描けない」。
- それは、子どものような自由さと、確かな技術(神の手)の、両方がある、ということでした。
子どもへの声かけ:「ピカソも、最初はみんなに『変な絵』って言われたんだよ。自分の好きなように描いても、いいんだね」
🎨 親子でやってみる遊び(この記事の提案)
※ここから先は、番組の内容をヒントにした、この記事の提案です。
- ポーズごっこ:絵の人物と同じポーズを、親子でまねしてみる。
- 3つの層探し:「手前・真ん中・奥」にあるものを、それぞれ見つける。
- 赤と青の実験:赤と青の紙を並べて、どちらが近く見えるかを話す。
- 顔をまぜる:好きなキャラクターの顔と体を、違うものにして描く(ガキゴキ感)。
- 1つのものを、3方向から描く:コップを、前・横・上から描いて、1枚に並べる。
⚠️ 子どもに話すときの注意
番組では、この絵の最初の構想は、売春宿を舞台にしていて、男性とドクロ(「死を思え」=メメント・モリ)が描かれていた、と紹介されていました。ピカソは、描き進めるうちに、その物語を消していき、形と描き方だけが残った、という解説です。お子さんの年齢によっては、この背景は、伏せておいてもよいと思います。
📝 文字起こしの補正メモ
音声の文字起こしの誤りを、文脈から推測して直しています。確度が「中」「低」のものは、違っているかもしれません。
| 文字起こし | 直した表記 | 確度 | 注記 |
|---|---|---|---|
| アビニョンの娘たち/アディオンの娘たち | アヴィニョンの娘たち | 高 | 番組の公式表記は「アヴィニョンの娘たち」 |
| ケビズム/キビズム/キリストの悩み | キュビスム | 高 | |
| 全タングル | ゼンタングル(模様を描く手法) | 中 | |
| モデル俳優の菊地ひなさん/菊池さん | 菊地姫奈さん(モデル・俳優) | 高 | 番組の公式ページで確認 |
| 竹内裕二さん | カメラマンの竹内さん(下の名前は未確認) | 低 | |
| さくら院長 | 佐倉統さん(科学技術論の研究者。この回の「院長」) | 高 | 番組の公式ページで確認 |
| 平松ろさん | 平松洋さん(美術評論家・フリーキュレーター) | 高 | 番組の公式ページで確認 |
| 瑞江未来さん | 水江未来さん(アニメーション作家) | 高 | 番組の公式ページで確認 |
| 布施。秀人さん | 布施英利さん(芸術学者) | 高 | 番組の公式ページで確認 |
| ジョーカー…眠れるヴィーナス | ジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」 | 高 | |
| 楽女ゲルニカ | 「ゲルニカ」 | 高 | |
| 195年(相対性理論の論文) | 1905年 | 高 | X線の「1895年」と対応 |
| 電極写真 | 連続写真 | 低 | 意味から推測 |
| 金形中継円形/緊急円形 | 近景・中景・遠景 | 高 | |
| ネオ天に要系成熟 | ネオテニー(幼形成熟) | 高 | |
| メタボールフォーズ | メタモルフォーゼ | 高 | |
| ベティブープの「ミニザムーチャ」 | ベティ・ブープ「ミニー・ザ・ムーチャー」 | 中 | |
| メメントモニー | メメント・モリ | 高 | |
| 伏せさんの解剖医/解剖医 | 布施さんの「解剖医」(番組での専門家の呼び名) | 高 | 番組は「院長と解剖医」の形式。誤りではなく、番組の用語 |
※この記事は、番組の内容を、自分の言葉でまとめたものです。人名や数字は、文字起こしからの推測を含みます。
